スキンケア

毎日塗っているのに、なぜ焼ける? SPFとPAの正しい読み方で、日焼け止め選びを見直す

監修:近澤 徹 医師

「毎日ちゃんと日焼け止めを塗っているのに、なぜかシミが増えている気がする」——そんな悩みを持ってクリニックを訪れる方は、思いのほか多くいらっしゃいます。日焼け止めさえ使っていれば安心、という感覚は理解できますが、実際には製品の選び方や使い方に誤解が生じていることが少なくありません。その誤解の出発点のひとつが、パッケージに書かれた「SPF」と「PA」という数値・記号の意味を正確に把握していないことです。

この二つの指標は、それぞれ異なる紫外線から肌を守るためのものです。紫外線には波長の異なる「UVB」と「UVA」という種類があり、SPFはUVBへの防御力を、PAはUVAへの防御力を示しています。つまり、SPFが高ければ万全というわけでも、PAの記号が多ければそれだけで十分というわけでもありません。シーンや目的に合わせて、この二つをセットで考える必要があります。

本稿では、美容皮膚科医の立場から、SPFとPAが何を意味するのか、どのような根拠に基づいた指標なのかを整理したうえで、日常生活と屋外活動という二つの場面ごとに、何を基準に選ぶべきかをご説明します。日焼け止めは、正しく選んで正しく使ってこそ、その効果を発揮できるものです。

そもそも紫外線とは何か——UVBとUVAの違いを知る

紫外線(UV:Ultraviolet)は、太陽光に含まれる目に見えない電磁波の一種で、波長によってUVA、UVB、UVCの三種類に分類されます。このうちUVCは大気中のオゾン層でほぼ吸収されるため、地表には届きません。私たちの肌に影響を与えるのは、主にUVAとUVBです。

UVB(波長280〜315nm)は、皮膚の表皮層に作用し、日焼け(サンバーン)を引き起こす主な原因となります。短時間で赤みや痛みをもたらす、いわゆる「急性の炎症反応」を誘発するのがこのUVBです。一方、UVA(波長315〜400nm)は、UVBよりも波長が長く、表皮を通り越して真皮層まで到達します。即座に赤くなるような強い反応を示しにくい分、じわじわとコラーゲンやエラスチンを傷つけ、シワやたるみ、くすみ、シミの原因となります。UVAはガラスを透過し、曇りの日にも相当量が地表に届くという特性があり、「見えにくいダメージ」という点で特に注意が必要です。

紫外線による皮膚ダメージは蓄積するものです。10代・20代のうちは実感がなくても、30代・40代になって突然シミやたるみが「顕在化」するのは、それまでの紫外線ダメージが積み重なった結果であることが多い。これは美容皮膚科の臨床において日常的に確認されることです。だからこそ、年齢に関わらず正しい紫外線対策を継続することが重要なのです。

SPFとは何か——UVBへの防御力を示す指標

SPF(Sun Protection Factor:紫外線防御指数)は、UVBに対する防御力を示す数値です。具体的には、「日焼け止めを塗った状態で皮膚が赤くなるまでの時間」が、「何も塗らない状態の何倍になるか」を示しています。たとえばSPF30であれば、塗っていない状態と比較して、日焼け(UVBによる紅斑反応)が起こるまでの時間が理論上30倍になるということです。

ただし、この数値は「一定量を均一に塗った場合」という条件のもとで測定されたものです。試験に用いられる塗布量の基準は2mg/cm²とされており、これは一般の方が日常的に使う量よりかなり多い量です。実際の使用では、適切な量を塗れていないケースが多く、実質的なSPF効果は表示値を大きく下回ることが多いとされています。SPFの高い製品を選ぶことも大切ですが、十分な量をムラなく塗布することがそれ以上に重要です。

ポイント:SPF50とSPF30の差は、一般的に思われているよりも小さなものです。SPF30は約97%のUVBをカット、SPF50は約98%のカット率とされています。数値の差が大きくても防御率の差はわずかであり、塗る量と塗り直しの頻度のほうが実際の防御効果に大きく影響します。

PAとは何か——UVAへの防御力を示す日本独自の指標

PA(Protection Grade of UVA)は、UVAに対する防御力を示す指標で、「+」の数で段階的に表されます。「PA+」「PA++」「PA+++」「PA++++」の4段階があり、「+」が多いほどUVAへの防御力が高いことを意味します。この指標は日本化粧品工業連合会(粧工連)が定めたもので、日本・アジア圏を中心に使われています。

測定方法は、UVAを照射した際に皮膚が黒化(色素沈着)するまでの反応に基づいており、日焼け止めを塗った場合と塗らない場合の比(PFA値:Protection Factor of UVA)をもとに「+」の数が決定されます。PA++++はPFA値が16以上に相当します。欧州ではIPD法(即時色素黒化)やPPD法(遅延型色素黒化)が用いられており、国際的には必ずしもPA表示が使われているわけではありませんが、日本で販売される製品においてはPA表示が普及しています。

UVAは、前述のとおり真皮層まで到達し、光老化(photoaging)を引き起こす主要因です。光老化とは、紫外線の繰り返し暴露によって生じる皮膚の老化変化のことで、シワ・たるみ・色素沈着・毛細血管拡張などが含まれます。シミ対策やエイジングケアを目的とするのであれば、PA値を軽視することはできません。

日常使いと屋外活動——シーン別の選び方の基準

SPFとPAの基本的な意味を理解したうえで、次に考えるべきは「どのシーンで、どの程度の防御力が必要か」という問いです。一般的に、紫外線防御力が高い製品は肌への負担も大きくなる傾向があり、必要以上の強さを毎日使い続けることが肌トラブルの一因になることもあります。

日常使いのシーン(通勤・買い物・室内中心)

主に室内で過ごし、外出は短時間という日常的な場面では、SPF15〜30・PA++〜PA+++程度が一般的に推奨されています。この程度の防御力であっても、適切な量を正しく塗れていれば、日常生活における紫外線ダメージを十分に軽減できます。また、肌への負担が比較的少なく、保湿成分が配合された製品も選びやすいため、スキンケアの一環として無理なく継続しやすいという利点があります。日焼け止めを継続して使うことが何より重要であり、使用感の良さや肌なじみのよさも製品選びの重要な要素です。

屋外活動・スポーツ・海水浴などのシーン

長時間屋外にいる場合、スポーツや海水浴など汗や水に触れる状況では、SPF50・PA++++といった高防御力の製品が適しています。さらに、汗や水に対する耐水性(ウォータープルーフ)を示す表示も確認することが重要です。ただし、ウォータープルーフ製品であっても、汗や摩擦によって防御効果は時間とともに低下します。2〜3時間ごとの塗り直しを習慣にすることが、防御効果を維持するうえで不可欠です。

どれほど優れた日焼け止めを選んでも、「塗る量が少ない」「塗り直しをしない」という使い方では十分な効果は期待できません。製品のSPF・PA値はあくまで基準のひとつであり、使い方そのものが防御力を左右します。——近澤 徹

日焼け止めのリスクと肌トラブルへの対処

日焼け止めは外用化粧品の中でも比較的刺激となりうる成分を含むものがあり、使用にあたって知っておくべき注意点があります。紫外線散乱剤(酸化亜鉛・酸化チタンなど)と紫外線吸収剤(オキシベンゾン・メトキシケイヒ酸エチルヘキシルなど)は、作用機序が異なり、それぞれに特性があります。

紫外線散乱剤は紫外線を反射・散乱させることで肌を守る成分で、敏感肌の方や乳幼児に向いているとされています。白浮きしやすいという欠点がありましたが、近年は微粒子化技術の進歩により使用感が改善された製品も増えています。一方、紫外線吸収剤は紫外線を化学的に吸収して熱に変換する仕組みで、透明感のある仕上がりが得られますが、一部の方では接触皮膚炎(かぶれ)を起こすことがあります。敏感肌の方は「紫外線吸収剤不使用(ノンケミカル)」と表示された散乱剤のみの製品を選ぶことも一つの方法です。

また、クレンジングが不十分な場合、日焼け止めの残留が毛穴詰まりや炎症の原因になることもあります。洗浄力の強いクレンジング剤で無理に落とすと、今度は必要な皮脂まで除去されて肌のバリア機能が低下します。製品に応じた適切な洗浄方法を選ぶことも、スキンケア全体のバランスとして重要です。

選ぶ前に確認すべきこと——製品表示の読み方と注意点

日焼け止め製品のパッケージには、SPF値・PA表示以外にも、確認しておくべき情報が含まれています。以下の表を参考に、製品選びの際にチェックしてみてください。

確認項目 内容と注意点
SPF値 UVBへの防御力。日常使いはSPF15〜30、屋外活動はSPF50が目安
PA表示 UVAへの防御力。+の数が多いほど高防御。シミ・老化対策にはPA+++以上を推奨
ウォータープルーフ 汗・水への耐性。屋外活動時は必須だが、塗り直しは必要
紫外線吸収剤の有無 敏感肌の方はノンケミカル(散乱剤のみ)製品を検討
容量・使用期限 適切な量を使うと消費は早い。開封後の使用期限も確認を

なお、既にシミやそばかすが気になる方、光線過敏症などの皮膚疾患がある方、ニキビや敏感肌のある方は、市販品の選択に迷ったり、肌トラブルが繰り返されたりする場合は、美容皮膚科や皮膚科に相談されることをお勧めします。医師の診察のもとで、肌の状態に合わせた製品選びや、シミ・色素沈着に対する医療的なアプローチを検討できます。

まとめ

  • 紫外線にはUVBとUVAの二種類があり、SPFはUVBへの防御力、PAはUVAへの防御力を示す指標である。
  • SPFの数値は「塗らない場合と比べて何倍の時間まで耐えられるか」を示すが、塗る量が不足すると実際の防御効果は大幅に下がる。
  • 日常使い(通勤・室内中心)にはSPF15〜30・PA++〜PA+++程度、屋外での長時間活動にはSPF50・PA++++が目安となる。
  • 防御力の高い製品を選ぶことと同等か、それ以上に、十分な量を均一に塗ること・定期的に塗り直すことが重要である。
  • 敏感肌の方やかぶれが気になる方は、紫外線散乱剤のみを使ったノンケミカル製品の選択も有効な手段である。
  • クレンジング不足による残留も肌トラブルの一因となるため、製品に適した洗浄方法を守ることも大切である。
  • 既存のシミや皮膚トラブルが気になる場合は、市販品での対応だけでなく、美容皮膚科への相談を検討する価値がある。

Closing Note

日焼け止めは、美容医療の観点からも「最も費用対効果の高いエイジングケア」のひとつです。いかに優れたシミ治療やレーザー施術を受けても、日々の紫外線対策が不十分では、その効果を持続させることは難しくなります。私が患者さんにお伝えするのは、「治療は再発を防ぐスキンケアと一体である」ということです。

SPFとPAの意味を正しく理解し、自分のライフスタイルに合った製品を選ぶことは、難しいことではありません。今日から少しだけ意識を変えて、日焼け止めを「義務」ではなく「自分の肌への投資」として捉えていただければ、長期的に大きな違いが生まれると考えています。何かご不明な点があれば、ぜひ診察室でお気軽にご相談ください。

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近澤徹

監修医師

近澤 徹

美容外科医・美容皮膚科医 / 日比谷セントラルクリニック 副院長

北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院にて研修。美容外科・美容皮膚科・再生医療を三本柱に、国内トップクラスの実績を積む。なかでもくまとり術・ヒアルロン酸注入においては全国屈指の症例数を誇り、全国の若手美容医師への技術指導・教育を担う指導医として第一線に立つ。審美性と安全性を徹底的に追求した施術哲学のもと、日比谷セントラルクリニック副院長として最高水準の美容医療を提供し続けている。

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