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美容医療を受ける前に知っておきたい「再生医療等安全性確保法」——あなたのクリニック選びは大丈夫ですか?

監修:近澤 徹 医師

「幹細胞治療」「PRP療法」「エクソソーム点滴」——美容医療の世界では、こうした再生医療系の施術がここ数年で急速に広まっています。アンチエイジング効果への期待から、雑誌やSNSで頻繁に取り上げられ、関心を持つ方も増えています。しかし、実際にクリニックを探してみると、提供している内容やその安全性の担保について、クリニックごとに大きな差があることに気づく方は少ないのではないでしょうか。

再生医療は、がんの治療から美容目的まで幅広く応用されている非常に可能性に富んだ分野です。一方で、その可能性の大きさゆえに、十分な審査や管理体制のないまま施術が行われれば、深刻な健康被害につながるリスクもあります。国際的にも問題事例が報告されており、日本では2014年にこれを規制するための法律が施行されました。それが「再生医療等安全性確保法」です。

この法律の存在を知らずに施術を受けることは、本人が気づかないうちに「法的な保護の外」にいる状態で治療を受けることと同義です。今回は、美容医療に関心をお持ちの方が安心・安全に施術を受けるために、この法律の概要と、クリニックを選ぶ際に確認すべき具体的なポイントをお伝えします。

「再生医療等安全性確保法」とはどのような法律か

正式名称は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」といいます。2014年11月に施行されたこの法律は、再生医療を提供する医療機関が守るべき手続きと基準を定めたものです。背景には、国内外で起きた細胞治療による感染・腫瘍化・死亡事故といった重篤な有害事象の報告があります。

法律が対象とするのは、ヒトの細胞に培養・加工などの処理を加えて用いる医療(再生医療等)です。美容医療の文脈でいえば、PRP(多血小板血漿)療法、幹細胞を用いた治療、脂肪由来幹細胞(ASC)治療、エクソソームを含む細胞由来成分の投与などが対象になります。なお、ヒアルロン酸注射やボトックス注射のような一般的な美容注射は、細胞を加工して用いるわけではないため、この法律の対象外です。

法律の柱となる仕組みは大きく2つです。ひとつは「提供計画の届出・承認制度」、もうひとつは「特定認定再生医療等委員会による審査」です。再生医療を実施しようとするクリニックは、施術のリスクの程度に応じて第一種・第二種・第三種に分類され、それぞれに定められた審査機関の承認または届出を経なければ施術を行うことができません。

ポイント:「再生医療等安全性確保法」に基づく手続きを経ていない医療機関が再生医療等を提供することは、法律違反となります。施術を受ける前に、当該クリニックが適切な届出・承認を取得しているかを確認することが大切です。

リスク分類(第一種・第二種・第三種)を理解する

法律では、再生医療等の安全性リスクに応じて施術を3つに分類しています。美容医療を検討する方には少しわかりにくい区分ですが、クリニックが「どのカテゴリの施術を、どの審査を受けて行っているか」を把握するうえで重要な知識です。

第一種再生医療等(最もリスクが高い)

遺伝子を導入した細胞を用いる治療や、iPS細胞・ES細胞を用いる治療が該当します。腫瘍化リスクや予測不能な生物学的影響が大きいため、厚生労働大臣への提供計画の提出と、国が認定する「特定認定再生医療等委員会」による審査・承認が必要です。現状、美容クリニックで一般的に提供されることはほとんどありません。

第二種再生医療等(中程度のリスク)

培養した体細胞(自己または他家)を用いる治療が該当します。美容医療では、幹細胞を培養・増殖させてから点滴や注射で投与する治療がこれにあたります。こちらも特定認定再生医療等委員会の審査と、厚生労働大臣への届出が必要です。

第三種再生医療等(比較的リスクが低い)

体から採取した血液や組織をその場で(または軽微な処理をして)用いる治療です。美容医療で広く行われているPRP療法(自己多血小板血漿療法)はここに分類されます。認定再生医療等委員会(第二種より審査基準がやや異なる)への届出が必要で、委員会の審査を受けずに実施することは違法となります。

PRPは「自分の血液を使うから安全」と説明されることがありますが、採血・遠心分離・注射という一連のプロセスには感染管理・無菌操作・適切な器具の使用が欠かせません。法律上の届出義務があることには、それだけの理由があります。

法整備の背景にある「リスクの実態」

再生医療系の施術に伴うリスクを過度に強調したいわけではありませんが、なぜこの法律が必要だったのかを理解するために、リスクの種類について触れておきます。

感染リスクについては、細胞の採取・培養・投与の各段階で細菌や真菌、ウイルスが混入する可能性があります。特に他家細胞(他人の細胞)を使用する場合、ドナー由来の感染症が伝播するリスクがあり、HIVや肝炎ウイルスのスクリーニングが不十分なケースが問題視されています。

腫瘍化リスクは、増殖能を持つ細胞を大量に投与する際に考慮しなければならない問題です。幹細胞は本来、組織の修復・再生を担う細胞ですが、適切に管理されない培養条件や投与量によって、腫瘍形成につながる可能性が基礎研究レベルで指摘されています。

投与部位・方法に関連するリスクも無視できません。静脈内投与では血栓塞栓症、脂肪注入では塞栓症・感染・石灰化などが起こり得ます。国内でも複数の有害事象が報告されており、一部は重篤な転帰をたどっています。

こうした背景を踏まえ、法律では細胞の品質管理・施術者の資格・施設基準・有害事象の報告義務などが規定されています。これらの基準を満たしていることを、届出・承認という形で担保しているのです。

クリニックを選ぶ際に確認すべき具体的な項目

では、実際に再生医療系の施術を検討するとき、何を確認すればよいのでしょうか。以下に、私が患者さんにお伝えしている確認ポイントをまとめます。

1. 提供計画番号・届出状況を確認する

再生医療等安全性確保法のもとで適切な届出を行っているクリニックは、厚生労働省のウェブサイトから公開されている「再生医療等提供機関一覧」で確認できます。クリニック側に提供計画番号の開示を求めることも、患者としての正当な権利です。

2. 使用する細胞の由来・処理方法を聞く

「自己細胞か他家細胞か」「どこで培養処理されているか(施設内か外部委託か)」「品質管理の基準は何か」——これらを明確に説明できないクリニックは、安全性への配慮が不十分な可能性があります。説明が曖昧なまま契約を急がせる場合は特に注意が必要です。

3. 担当医師の資格・経験を確認する

再生医療等安全性確保法では、施術を行う医師自身の要件も定められています。日本再生医療学会や関連専門学会への所属、認定医・専門医資格の有無を確認することが一つの指標になります。

4. 有害事象が起きた場合の対応体制を聞く

法律では、施術後に重篤な有害事象が発生した場合、医療機関が厚生労働大臣に報告する義務があります。「万が一の際にどう対応するか」を事前に確認し、その回答が具体的かどうかを判断材料にしてください。

ポイント:「国内未承認だが海外では実施されている」「今だけ特別価格」などの説明を受けた場合は、一度立ち止まって冷静に判断することをお勧めします。法律上の承認・届出の有無と、医学的なエビデンスの有無は別の問題として整理して考える必要があります。
確認項目 具体的な確認方法
届出・承認の有無 厚生労働省の公開情報を検索、または提供計画番号をクリニックに確認
使用細胞の由来と品質管理 カウンセリング時に文書または口頭で説明を受ける
担当医師の資格・経験 クリニックのウェブサイト・初診時の質問
有害事象への対応体制 カウンセリング時に「もし副作用が出たらどう対応するか」を質問
インフォームド・コンセント 書面での説明・同意取得があるかを確認

費用の目安と保険適用について

現在、美容目的で行われる再生医療系の施術は、基本的に全額自由診療(保険適用外)となります。費用はクリニックや施術内容によって大きく異なりますが、一般的な目安として以下のような範囲が見られます。

  • PRP療法(顔面への注射):1回あたり3万〜15万円程度
  • 幹細胞点滴(培養幹細胞の静脈内投与):1回あたり30万〜100万円以上
  • エクソソーム点滴・注射:1回あたり5万〜50万円程度(製品や濃度による)

費用の高さ自体が安全性や有効性を保証するわけではありません。また、安価だからといって法的要件を満たしていないクリニックを選ぶことは、健康上のリスクを高める可能性があります。費用よりも、前述の確認事項を優先して判断されることをお勧めします。

なお、エクソソームについては現時点(2025年時点)で日本国内において医薬品・医療機器としての承認を受けた製品はなく、研究段階の技術として位置付けられています。提供を受ける際は、エビデンスの現状と法的な位置づけについて十分な説明を受けたうえで判断されることが重要です。

まとめ

  • 再生医療等安全性確保法は、細胞を用いる医療行為の安全性を担保するために2014年に施行された法律であり、PRP療法・幹細胞治療などの美容医療にも適用される。
  • 施術のリスクに応じて第一種・第二種・第三種に分類され、それぞれに定められた審査・届出が義務付けられている。届出のないクリニックでの受診は法律の保護の外に置かれるリスクがある。
  • クリニックを選ぶ際は、提供計画番号の確認・使用細胞の説明・担当医師の資格・有害事象対応体制・インフォームド・コンセントの5点を必ず確認する。
  • 費用の高低は安全性・有効性を保証しない。エクソソームなど国内未承認の施術については、エビデンスと法的位置づけを正しく理解したうえで判断する。
  • 「自分の血液・細胞だから安全」という説明は正確ではない。採取・処理・投与の各段階に適切な管理基準が必要であり、それを担保するのがこの法律である。
  • 疑問や不安を感じた場合は、施術を急がず、複数のクリニックで説明を受けたうえで判断することが重要。

Closing Note

再生医療は、美容医療においても確かな可能性を持つ分野です。適切な管理のもとで行われるPRP療法には一定のエビデンスが蓄積されていますし、幹細胞研究は日進月歩で進んでいます。私自身も、この領域の発展には大きな期待を持っています。だからこそ、正しい知識を持たないまま施術を受けることで、その可能性が「不信」や「被害」に変わってしまうことを惜しく思います。

「良さそうなクリニックだから大丈夫」ではなく、「確認すべきことを確認したうえで選んだクリニックだから安心できる」——そのような選び方ができる方が一人でも増えることを願っています。再生医療系の施術を検討されている方は、ぜひ今回お伝えした確認ポイントをカウンセリングの場で活用してみてください。わからないことがあれば、遠慮なく担当医に質問することが、安全な美容医療への第一歩です。

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近澤徹

監修医師

近澤 徹

美容外科医・美容皮膚科医 / 日比谷セントラルクリニック 副院長

北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院にて研修。美容外科・美容皮膚科・再生医療を三本柱に、国内トップクラスの実績を積む。なかでもくまとり術・ヒアルロン酸注入においては全国屈指の症例数を誇り、全国の若手美容医師への技術指導・教育を担う指導医として第一線に立つ。審美性と安全性を徹底的に追求した施術哲学のもと、日比谷セントラルクリニック副院長として最高水準の美容医療を提供し続けている。

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