スキンケア

日焼け止めは「SPFだけ」で選んでいませんか?UV-AとUV-Bの違いが、10年後の肌を決める

監修:近澤 徹 医師

「毎日日焼け止めを塗っているのに、シミやたるみが気になってきた」——そう感じている方は少なくありません。実は、日焼け止め選びを「SPFの数字だけ」で済ませている場合、知らないうちに肌老化の大きな原因が蓄積し続けている可能性があります。

紫外線には大きく分けてUV-AとUV-Bという二種類があり、それぞれが肌に与えるダメージはまったく異なります。美容皮膚科の外来では、「シミが増えた」「肌がたるんできた」「毛穴が目立つようになった」というお悩みを持つ患者様の多くが、この二種類の紫外線の違いを知らないまま、片方しかケアできていない日焼け止めを長年使い続けていたケースに出会います。

本稿では、UV-AとUV-Bそれぞれの性質と肌への影響、科学的に支持される「光老化」のメカニズム、そして日焼け止めの正しい選び方と使い方について、できるだけ具体的にお伝えします。日焼け止めは「塗ればよい」ではなく「何を・どう選ぶか」が、5年後・10年後の肌の状態を大きく左右するのです。

UV-AとUV-Bは「別の紫外線」——波長が違えばダメージも違う

太陽から降り注ぐ紫外線は、波長によってUV-C(100〜280nm)、UV-B(280〜315nm)、UV-A(315〜400nm)の三種類に分類されます。UV-Cはオゾン層でほぼ完全に吸収されるため、地表には届きません。私たちの肌に影響を与えるのは、UV-BとUV-Aの二種類です。

UV-B:「焼ける」紫外線

UV-Bは波長が短く、エネルギーが高いため、主に皮膚の表皮層に作用します。日焼けによる赤みや炎症(サンバーン)の主な原因となり、メラノサイト(色素細胞)を刺激してメラニンの産生を促します。SPF(Sun Protection Factor)という指標は、まさにこのUV-Bに対する防御能力を示すものです。強い炎症を引き起こすため即時的なダメージとして自覚しやすく、「日焼けした」と感じるのはUV-Bによるものです。さらに、DNAへの直接的な傷害を与え、皮膚がんリスクとの関連も指摘されています。

UV-A:「老化させる」紫外線

UV-Aは波長が長く、UV-Bよりも深い層——真皮にまで到達します。即座に皮膚を赤くする力は弱いため、「大した日焼けをしていない」と感じていても、UV-Aは確実に肌の奥で働いています。コラーゲンやエラスチンを産生する線維芽細胞を傷つけ、肌のハリや弾力を徐々に失わせるのが主なダメージです。シワ、たるみ、毛穴の開き、くすみといった「老化サイン」の多くはUV-Aの長年にわたる蓄積が深く関係しています。これを「光老化(photoaging)」と呼びます。

さらに厄介なのが、UV-Aは雲や窓ガラスをある程度透過するという点です。曇りの日や屋内にいても、UV-Aのダメージはゼロではありません。地表に届く紫外線の約95%はUV-Aとも言われており、量的にもUV-Bを大きく上回ります。「室内にいるから大丈夫」という安心感は、UV-Aに関しては必ずしも正しくないのです。

光老化とは何か——科学が示す「紫外線と老化」の関係

「光老化」とは、紫外線の慢性的な曝露によって生じる皮膚の老化変化を指す医学用語です。自然な加齢による老化(内因性老化)とは区別されており、その責任の大部分はUV-Aが担っています。

光老化のメカニズムとして現在よく知られているのは、活性酸素(ROS)を介した経路です。UV-Aが皮膚に吸収されると、細胞内で活性酸素が発生し、これがコラーゲンを分解する酵素(マトリックスメタロプロテアーゼ、MMP)を活性化します。コラーゲンが分解されると真皮の構造が崩れ、シワやたるみが進行します。同時に、新しいコラーゲンの合成能力も低下するため、「壊れる速度が作られる速度を上回る」という悪循環が生まれます。

著名な研究として、アメリカの皮膚科学雑誌に掲載された一卵性双生児の比較研究があります。遺伝的条件が同一であるにもかかわらず、紫外線曝露量の差によって皮膚の老化度に明らかな差異が生じていたことが報告されています。また、アメリカ皮膚科学会(AAD)はシワや皮膚がんの予防に対する日焼け止めの有効性をエビデンスに基づいて推奨しており、日常的な日焼け止めの使用がコラーゲン分解を有意に抑制するという無作為化比較試験の結果も報告されています(Hughes et al., Annals of Internal Medicine, 2013)。

ポイント:光老化の大部分はUV-Aによるもので、曇りの日・室内でも進行します。日々の積み重ねが数年後の肌状態に直結するため、若い年代からの対策が特に重要です。

SPFとPAだけでは不十分——日焼け止め表示の正しい読み方

日焼け止め製品には「SPF50+ PA++++」のような表示が記載されています。ここで多くの方が誤解しているのが、SPFはUV-Bへの防御指標であり、UV-Aに対する指標ではないという点です。

SPF(Sun Protection Factor)

SPFは、UV-Bによるサンバーン(炎症性の日焼け)をどれだけ遅らせるかを示す数値です。SPF30であれば、日焼け止めを塗っていない状態と比較して約30倍の時間が経過するまでサンバーンが起きにくいことを意味します。ただし、これはあくまでUV-Bに対する指標です。

PA(Protection Grade of UV-A)

PAはUV-Aに対する防御効果を「+」の数で表す日本独自の表示方法です。「+」が多いほどUV-Aへの防御効果が高く、現在は最高でPA++++まで設定されています。光老化を防ぐうえでは、このPAの値を意識することがきわめて重要です。SPF50+でもPAが低ければ、シワやたるみの原因となるUV-Aへの防御は不十分ということになります。

海外製品の場合:Broad Spectrum表示を確認

欧米の日焼け止め製品には「Broad Spectrum」という表示があります。これは、UV-BだけでなくUV-Aもカバーしていることを示すものです。海外で購入した製品や並行輸入品を使用する際は、このBroad Spectrum表示の有無を確認することをお勧めします。

指標 対象となる紫外線 主なダメージ 目安となる推奨レベル
SPF UV-B 炎症・色素沈着・DNA傷害 日常使いSPF30以上、屋外活動はSPF50以上
PA UV-A 光老化・シワ・たるみ・コラーゲン分解 PA+++以上を推奨(光老化対策ならPA++++)

「塗り方」と「量」が防御効果を決める——正しい使用法

どれほど優れた日焼け止めを選んでも、使い方が適切でなければ本来の効果を発揮できません。臨床研究では、多くの人が推奨量の20〜50%程度しか塗布していないことが報告されています(Autier et al., 2007)。SPFの数値は規定量(2mg/cm²)を塗布したときに得られるものですから、薄塗りでは表示値よりも大幅に防御効果が下がります。

顔への適切な使用量の目安

顔全体には、パール粒2個分(乳液・クリームタイプの場合)または500円玉1枚分(ローションタイプの場合)が目安とされています。「少し多いかな」と感じるくらいが実は適量です。また、塗り残しが生じやすい目頭・小鼻の脇・口角周辺・耳なども意識して丁寧に塗布してください。

塗り直しの重要性

日焼け止めは汗や皮脂、摩擦によって時間とともに落ちていきます。屋外にいる場合は2〜3時間を目安に塗り直すことが推奨されています。室内でも、紫外線が強い時期や窓際での長時間作業がある場合は、1日1回の塗布だけでは不十分なことがあります。

日焼け止めを正しく使っている方でも、紫外線対策を習慣化できたのが30代以降という方は少なくありません。「遅すぎた」と思う必要はありませんが、すでに生じた光老化の変化(シミ・シワ・たるみ)については、日焼け止めだけでの改善には限界があります。その場合は美容皮膚科での光治療やレーザー治療、真皮へのアプローチが検討肢の一つになります。

肌質・ライフスタイルに合わせた日焼け止め選びのポイント

日焼け止めの成分は大きく「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の二種類に分けられます。それぞれに特徴があり、肌質や用途に応じて選ぶことが大切です。

紫外線吸収剤

紫外線のエネルギーを化学反応によって吸収し、熱などに変換して放散する成分です。代表的なものにジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(ユビナール A プラス)やオクチノキサートなどがあります。肌への伸びがよくべたつきが少ない一方、一部の方には接触性皮膚炎(かぶれ)を引き起こすことがあります。敏感肌の方は成分表示を確認し、パッチテスト(腕の内側などで試す)を行うことをお勧めします。

紫外線散乱剤

酸化亜鉛や酸化チタンが代表的で、肌の表面で紫外線を物理的に反射・散乱させます。肌への刺激が比較的少なく、敏感肌や乳幼児の肌にも使いやすいとされています。ただし、白浮きしやすいものもあり、使用感が重く感じられることもあります。近年はナノ粒子化によって使用感が改善された製品も増えています。

日常的なオフィスワーク中心の生活であればSPF30・PA+++程度でも十分対応できますが、屋外でのスポーツや海・山などの強い日差しが予想される場面ではSPF50+・PA++++を選ぶことが理にかなっています。また、日焼け止めとメイクの下地を兼ねたタイプも多く市販されていますが、カバー力や質感を優先した結果としてUV-Aへの防御が弱い製品もあるため、PA表示を必ず確認してください。

まとめ

  • 紫外線はUV-AとUV-Bの二種類があり、それぞれ肌へのダメージの性質が異なる。UV-Bは炎症・色素沈着を引き起こし、UV-Aは真皮のコラーゲンを破壊し光老化(シワ・たるみ)を進行させる。
  • SPFはUV-Bへの防御指標であり、UV-Aへの防御力を示すものではない。UV-A対策にはPA値(PA+++以上推奨)を必ず確認する
  • UV-Aは曇りの日や窓越しにも届く。室内にいるからといって油断は禁物で、日々のUV-A対策が光老化の蓄積を防ぐ。
  • 日焼け止めの使用量は思いのほか多めが正解。薄塗りではSPF・PA表示通りの効果が得られない。2〜3時間ごとの塗り直しも習慣にしたい。
  • 肌質や生活シーンに合わせて吸収剤・散乱剤の特性を理解したうえで製品を選ぶことで、日焼け止めのストレスを減らしながら継続的な対策が可能になる。
  • すでに生じた光老化の変化(シミ・シワ・たるみ)は日焼け止めだけでは改善しにくい。気になるサインがある場合は美容皮膚科での相談も選択肢として考えてほしい。

Closing Note

光老化は「気づいたときにはもう進んでいる」老化です。UV-Aによるコラーゲンの分解は痛みも赤みも伴わず、じわじわと静かに進行するため、自覚が生まれるまでに長い時間がかかります。だからこそ、「日焼け止めをすでに使っている」という安心感の中に潜む見落とし——UV-A対策の不足——に早く気づいてほしいと思っています。

日焼け止めは毎日使うものだからこそ、正しく選び、正しく使うことで長期的な効果が生まれます。SPFとPAの両方を意識した製品選び、そして適切な量と塗り直しの習慣を、今日から実践していただけると嬉しいです。美容皮膚科は「すでにできてしまったダメージをケアする場所」でもありますが、「ダメージを未然に防ぐための知識を提供する場所」でもあります。不安なことや疑問があれば、ぜひ気軽にご相談ください。

← コラム一覧へ
近澤徹

監修医師

近澤 徹

美容外科医・美容皮膚科医 / 日比谷セントラルクリニック 副院長

北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院にて研修。美容外科・美容皮膚科・再生医療を三本柱に、国内トップクラスの実績を積む。なかでもくまとり術・ヒアルロン酸注入においては全国屈指の症例数を誇り、全国の若手美容医師への技術指導・教育を担う指導医として第一線に立つ。審美性と安全性を徹底的に追求した施術哲学のもと、日比谷セントラルクリニック副院長として最高水準の美容医療を提供し続けている。

RESERVATION

まずは無料カウンセリングから

院長が直接ご相談をお聞きします。無理な勧誘は一切行いません。

オンライン予約 →