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美容医療の副作用・リスクを「正しく怖がる」ために知っておきたいこと

監修:近澤 徹 医師

美容医療に関心を持つ方が年々増えています。SNSや動画で「施術前後の変化」が手軽に見られるようになり、かつてより身近な選択肢になったことは確かです。しかし同時に、私のクリニックへの相談の中で「他院で施術を受けたが、説明になかった症状が出た」「副作用が不安で一歩踏み出せない」というお声も増えてきました。情報が増えた時代だからこそ、良い情報も不正確な情報も同じ速度で広がる——そのことを、私は日々の診療の中で実感しています。

副作用やリスクを「怖いもの」として遠ざけるのではなく、「起こりうる現象として正しく理解する」ことが、美容医療と賢く向き合う第一歩です。たとえば、注射後の内出血は多くの方に一時的に現れますが、適切なケアで自然に消退します。一方、まれに起こる血管塞栓(けっかんそくせん)は迅速な対処が必要な重篤な合併症です。この両者を同列に「副作用」と呼ぶことで、過度に怖がったり、逆に軽視したりする判断ミスが生じます。

このコラムでは、代表的な美容医療の副作用を「頻度」と「重篤度」という二つの軸で整理し、それぞれの対処法と予防策を解説します。情報を整理することが、皆さんの「正しく怖がる力」を育てると私は考えています。

副作用はなぜ起きるのか——身体の反応として理解する

美容医療における副作用は、大きく三つの要因から生じます。第一は施術そのものによる組織への侵襲(しんしゅう)、つまり皮膚や組織に対して物理的・化学的な刺激が加わること。第二は個人の体質や免疫反応。第三は施術の精度・技術に関わる要因です。

たとえばヒアルロン酸注射後の腫れや内出血は、針が皮下組織を通ることによる一時的な炎症反応であり、多くの場合は数日以内に自然消退します。これは「副作用」というより「身体の正常な治癒反応」と理解するほうが正確です。一方、アレルギー反応や感染は、個人の体質や施術環境・手技の問題が関わるため、事前の問診・術後のケア・衛生管理が予防の鍵になります。

重要なのは、すべての侵襲的施術にはゼロリスクは存在しないという前提を共有することです。これは美容医療に限らず、外科手術全般に言えることです。問題は「リスクがあるかないか」ではなく「そのリスクがどの程度の頻度で起こり、どう対処できるか」を事前に知っているかどうかです。

頻度が高い副作用——多くの方に起こりうること

以下は、代表的な施術別に発生頻度が高い副作用をまとめたものです。「よくあること」として適切に理解していただくことで、施術後の不要な不安を減らすことができます。

施術 頻度の高い副作用 一般的な消退期間
ヒアルロン酸注射 内出血・腫れ・圧痛 3〜10日程度
ボツリヌストキシン注射 注射部位の腫れ・軽度の頭痛 1〜3日程度
レーザー・光治療 赤み・ほてり・一時的な色素沈着 数日〜数週間
ケミカルピーリング 赤み・乾燥・皮むけ 数日〜2週間
糸リフト(スレッドリフト) 腫れ・内出血・ひきつれ感 1〜2週間程度

これらは多くの場合、施術後の適切なアフターケア(保冷・保湿・紫外線対策など)によって対応できます。ただし、同じ「腫れ」でも、数日以内に改善しない場合や、痛みが増強する場合は感染や血腫(けっしゅ:皮下に血液が貯留した状態)の可能性があるため、早めに施術を行ったクリニックへ連絡することが重要です。

ポイント:術後の変化が「想定内の反応」なのか「早期対処が必要なサイン」なのかを判断する基準として、「悪化していないか」「左右差が極端でないか」「高熱・強い痛みを伴っていないか」を目安にしましょう。

頻度は低いが知っておくべき重篤なリスク

頻度は高くありませんが、発生した場合に迅速な対応が必要なリスクについても、きちんと説明を受けた上で施術に臨むことが大切です。代表的なものとして以下が挙げられます。

血管塞栓(フィラー注入時)

ヒアルロン酸などのフィラー(充填剤)を注射する際、誤って血管内に注入したり、血管が圧迫されたりすることで、皮膚の壊死(えし)や視力障害などが引き起こされることがあります。発生頻度は非常に低い(報告によれば1万件あたり数件程度とされています)ものの、発生した場合は数分〜数時間以内の対処が必要です。ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸を溶解する酵素製剤)による緊急処置が有効であるため、施術を行うクリニックがこの薬剤を常備しているか、対応できる体制にあるかを事前に確認することを私は強くお勧めしています。

感染・バイオフィルム形成

皮膚を貫通する施術では、適切な消毒・無菌操作が行われない場合に感染が起こりえます。また、フィラー注入後まれにバイオフィルム(細菌が形成する膜状の構造体)が生じ、遅発性の腫れや肉芽腫(にくげしゅ)として数ヶ月後に現れるケースもあります。感染の徴候(発赤・熱感・化膿)が現れた場合は抗生剤による早期治療が必要です。

ボツリヌストキシンの拡散による機能障害

ボツリヌストキシンが意図しない筋肉に拡散した場合、まぶたが下がる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」や、表情筋の過度な弛緩(しかん)が一時的に生じることがあります。これらは通常、数週間〜3ヶ月程度で自然回復しますが、注射部位の選択・用量の管理が重要です。

重篤な合併症の多くは、施術者の経験・技術・解剖学的知識、そして適切な緊急対応体制によって予防・軽減できます。施術前に「万が一の際の対応方法」についても確認しておくことは、患者さんの権利です。

副作用が起きやすい「個人差」の要因

同じ施術でも、副作用の出方には個人差があります。主な要因として以下が挙げられます。

  • 抗凝固薬・NSAIDsの服用:血液をさらさらにする薬(ワーファリン、アスピリン、イブプロフェンなど)を服用している場合、内出血が生じやすくなります。施術前に必ず申告し、担当医の指示に従って休薬の可否を確認してください。
  • 過去のアレルギー歴:薬剤・麻酔・消毒剤に対するアレルギーがある方は、施術前にパッチテストや問診での申告が必要です。
  • 免疫疾患・自己免疫疾患:関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの疾患がある場合、フィラーに対する肉芽腫形成リスクが高まることが報告されています。
  • ケロイド体質:傷が赤く盛り上がりやすい体質の方は、切開を伴う施術後に肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)が生じるリスクがあります。
  • 喫煙:創傷治癒を遅らせ、感染リスクを高めます。施術前後の禁煙が回復の質に影響します。

これらの要因はカウンセリング・問診の段階で必ず共有してください。「たいしたことではないかもしれない」と思って申告しなかった情報が、リスク管理の盲点になることがあります。

施術を受ける前に確認すべき5つのこと

美容医療を検討する際、私がカウンセリングで必ず患者さんにお伝えしていることを整理します。

1. インフォームド・コンセントの内容を必ず確認する

インフォームド・コンセントとは、施術の内容・期待できる効果・起こりうるリスク・代替手段について十分な説明を受け、患者が自らの意思で同意することを指します。説明が口頭のみで書面がない、リスクについての説明が曖昧、質問に対して答えが返ってこない——そのような場合は、一度立ち止まることをお勧めします。

2. ダウンタイムを現実的に把握する

ダウンタイムとは、施術後に社会生活を通常通り送るまでに要する回復期間のことです。「すぐ職場に戻れます」という説明が必ずしも全員に当てはまるわけではなく、個人差があります。重要な予定(式典・撮影・会議など)の直前に施術を入れることは避けましょう。

3. アフターケア体制を確認する

施術後に異常が生じた場合、いつ・どこへ・どのように連絡すれば良いかを事前に確認しておくことが大切です。緊急時の対応体制が整っているクリニックかどうかは、信頼性の重要な指標の一つです。

4. 修正・追加治療の費用を把握する

フィラーの溶解処置、レーザー照射後の色素沈着への対応など、追加で必要になりうる処置とその費用を事前に確認することで、予期しない追加費用への備えができます。

5. 「断る権利」は自分にある

カウンセリングの場でプレッシャーを感じた場合、その日に決断する必要はありません。複数のクリニックで相談する「セカンドオピニオン」も有効な選択肢です。納得のいく形で施術に臨むことが、最終的な満足度と安全性の両方につながります。

まとめ

  • 美容医療における副作用は「頻度が高く一時的なもの」と「頻度は低いが迅速な対処が必要なもの」に分けて理解することが重要です。
  • 内出血・腫れ・赤みといった一時的な反応は多くの施術で起こりうる正常な経過であり、適切なアフターケアで対応できます。
  • 血管塞栓・感染・アレルギー反応などの重篤な合併症は頻度こそ低いものの、発生時の迅速な対処体制が整っているかを事前に確認することが肝心です。
  • 服用中の薬・アレルギー歴・体質(ケロイドなど)は必ずカウンセリング時に申告してください。
  • インフォームド・コンセントの内容、ダウンタイム、アフターケア体制、追加費用の有無は施術前に必ず確認すべき事項です。
  • 納得いくまで質問し、「断る・再考する権利」は常に患者さん自身にあります。

Closing Note

「正しく怖がる」というのは、怖がることをやめることでも、目をつぶることでもありません。何がどの程度の頻度で起こりうるかを知り、もし起きたときにどう対処できるかを理解した上で、自分の意志で選択することです。美容医療は、適切な情報と信頼できる医師のもとで受けることで、リスクを最小化しながら望む変化を得られる医療です。

私自身、カウンセリングの場で「リスクの説明が怖かった」とおっしゃる方に多くお会いしてきました。しかし施術後、「事前に知っておいてよかった」とおっしゃる方の方が圧倒的に多い。知識は不安を消すためにあるのではなく、不安を適切な判断に変えるためにあります。このコラムが、皆さんの一歩を後押しする小さな力になれれば幸いです。

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近澤徹

監修医師

近澤 徹

美容外科医・美容皮膚科医 / 日比谷セントラルクリニック 副院長

北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学病院にて研修。美容外科・美容皮膚科・再生医療を三本柱に、国内トップクラスの実績を積む。なかでもくまとり術・ヒアルロン酸注入においては全国屈指の症例数を誇り、全国の若手美容医師への技術指導・教育を担う指導医として第一線に立つ。審美性と安全性を徹底的に追求した施術哲学のもと、日比谷セントラルクリニック副院長として最高水準の美容医療を提供し続けている。

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